
映画『栄光のバックホーム』主演・松谷鷹也さん、秋元純監督にインタビュー。― 姫路で語られた“横田慎太郎という人生” ―
18歳でプロ入りし、阪神タイガースの若きホープとして将来を嘱望されながらも、21歳で脳腫瘍を発症。懸命な闘病の末、引退を余儀なくされた横田慎太郎さん。本作『栄光のバックホーム』は、横田選手の自著『奇跡のバックホーム』、そして家族と共に病と向き合い続けた軌跡を描いたノンフィクション『栄光のバックホーム』(ともに幻冬舎文庫)を原作に映画化された作品です。
制作総指揮は見城徹氏。
『20歳のソウル』で知られる秋元純監督が、企画・監督・プロデュースを務め、幻冬舎フィルム第一回作品として完成しました。
2023年11月28日(金)より全国公開され、公開から1か月を待たずして興行収入10億円を突破。
全国の映画館の興行ランキングでは、アースシネマズ姫路が全国3位に入るなど、姫路でも大きな反響を呼んでいます。
主人公・横田慎太郎を演じたのは新人俳優の松谷鷹也さん。
亡くなる直前の横田さんのもとへ何度も足を運び、本人から譲り受けたグラブを使って、“奇跡のバックホーム”を完全再現しました。
阪神が18年ぶりのリーグ優勝を果たした2023年9月。そのわずか2か月前、横田慎太郎さんは28歳という若さでこの世を去りました。
阪神ファンのみならず、多くの野球ファンに愛された横田慎太郎さんとご家族の姿を描いた本作について、
松谷鷹也さん、そして秋元純監督のお二人にお話を伺いました

―― 「第50回報知映画賞」の新人賞受賞おめでとうございます。
松谷さんが慎太郎さんを意識したポイント、演じる準備に関してどんな事をしたか教えてください。
「一番意識したのは、慎太郎さんへのリスペクトを忘れないことです。
川藤さんのYouTubeや、鹿児島実業の試合映像など、映画に出てくる映像はすべて目を通しました。鹿児島実業の宮下監督や、遠藤記者など、慎太郎さんと交流の深かった方々にも直接お会いして準備を重ねました。
周囲の方から聞いたお話も含め、慎太郎さんはとても真っ直ぐな方だったので、そこも大切にしました。」
―― 一番難しかったなと思ったシーンはありますか?
「特に“難しい”と感じたシーンはなかったです。
実際に慎太郎さんが入院されていた病院やホスピスにも伺い、お葬式にも参列しました。講演会にも行き、自分の目で見たことをそのまま映画に落とし込む、慎太郎さんの生き様を追体験する気持ちで演じていました。
ただ、慎太郎さんは誰が見ても体格の大きな選手だったので、身体づくりには一番気を使いました」
―― 作中では関西弁を話す役柄も多かったですが、関西弁のイメージを教えてください。
「父と母が大阪出身なので、小さい頃から関西弁を聞いて育ちました。
強く聞こえることもありますが、温かさがあってすごく素敵だなと思います。懐かしい気持ちになりますね。
今日も関西の方が多かったと思いますが、声をかけていただいてとても嬉しかったです」
秋元純監督インタビュー
「これは“野球映画”でも“闘病映画”でもない」
―― 今回の作品は、阪神ファン以外や、野球に詳しくない方にも届いている印象があります。
監督としては「阪神の横田慎太郎」というより、“一人の人生”として描かれたのでしょうか?
秋元監督
「この映画は“野球物”でも“闘病物”でもありません。一人の人生を描くということには、それだけの重さがあります。
横田慎太郎さんを描く以上、野球も家族の問題も、すべてをパーフェクトに描かなくてはいけないと思っていました。
阪神だけの映画でも、野球だけの映画でもない。野球シーンは非常にシビアに撮っていますが、ファミリー層や、普段あまり映画を観ない方にも観てほしい。
100年先、名前も知らない誰かに向けても届く映画にしたい、そんな思いで作りました」
―― 実在の人物を演じる上で、役者さんへの演出で意識したことは?
「“モノマネは禁止”にしました。
掛布さんを演じた古田新太さんは『似ていない』と言われますが、似せようとしたわけではありません。
役者さんには原作を読んで、感じたままを演じてもらいました。
ただ、鷹也だけは特別でした。すべての資料を見て、すべてを勉強し、同じだけの想いで練習し、先輩たちと同じように接することで“横田慎太郎として生きる”ことを背負ってくれた。
それが今回の新人賞という評価につながったのではないかと思っています」
姫路の皆さんへメッセージをいただきました。
松谷鷹也さん
「いつも満席で温かく迎えてくださって、本当に嬉しいです。
姫路駅からまっすぐ見える姫路城が本当に印象的でした。
相生で慎太郎さんの講演会があり、その帰りに姫路城の近くまで来たこともありますが、思ったより歩きました(笑)。
建造物が好きなので、次はじっくりお城を見に行きたいです。」
秋元純監督
「全国3位という結果を聞いて、なぜ姫路なのかと考えました。
横田さんを歓迎する空気がこの街にあるのではないかと思っています。
姫路は高校野球も強いですし、映画に登場する北條選手も今は三菱重工West(高砂・神戸)に所属しています。
野球を愛する方が多い街という印象ですね。
暖かい街ですし、ぜひ姫路で映画を撮りたい。白鷺城には遠足で行った思い出もあります。
神戸出身なので、赤穂へ行く途中で姫路の駅そばをよく食べていました。年明けも関西に来る予定なので、ぜひ姫路を再訪したいです」
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